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あおのロンド 27


 少し待った後、本人が出た。
「もしもし、ライリーさん?」
「はい。 ごめんね、こんな遅く」
「いいですよ」
 低い声が聞こえてきた。 どこか投げやりな響きがあった。
「どうせ二十九時ぐらいまで撮影に付き合うんです。 それで何か?」
 ライリーは息を整え、ずばりと切り出した。
「あなたとマオちゃん、なんで喧嘩してるの?」
一呼吸置いて、結城は答えではなく質問を返してきた。
「マオに会ったんですか?」
 ライリーの声が鋭くなった。
「会ったも何も、もう四日間うちに泊まってるのよ」
 今度の間は一呼吸どころではなかった。 電話を置いてどこかへ行ってしまったのではないかと、ライリーは心配になった。
「もしもし。 もしもーし?」
「そこにいるんですか? ずっと?」
「あなたね、質問ばっかりしないで答えなさいよ! こんなかわいい奥さんを家から追い出して……」
「追い出してなんかいませんよ! 僕だって一度帰っただけなんだから」
「原因は何、原因は! マオは見当つかないってよ」
「そんなはずあるか!」
 結城誠也としては稀なことに、罵声が受話器から飛び出してきて、耳が敏感なライリーは急いで携帯を三十センチほど離した。
 堰が切れたように、結城はわめいていた。
「抱き合ってたんですよ! 男と! 新宿の繁華街の真ん真ん中で!」
 あまり声が大きいので、近くに立っていたマオにも充分聞こえた。
 ヨウちゃんとライリーの四つの目に見つめられて、マオはみるみる赤くなった。
「うそ。 ありえない! 男の人と抱き合うなんて、井上さんとだって人前ではできないもの! だいたいどうして……」
 必死で言い張っているうちに、はっと思い当たって、マオの眼が裂けそうに広がった。
「まさか!」
「心当たりあるの?」
「待って」
 小さく叫びながら、マオは自分の携帯をヨウちゃんから引ったくり、入れてある写真を検索し始めた。
 すぐに目的のものは見つかった。 マオは胸を大きく上下させながら、そのツーショットをライリーの顔の前に差しつけた。
「あんらまー」
 それは、先入観のある者が見たら、まさに浮気写真だった。 黒い帽子を斜めかぶりしたすっきり顔の『男の子』とマオがほっぺたをくっつけるようにして写っている。 どちらも満面の笑顔で、指を絡めてVサインをWに作っていた。
 横から覗きこんだヨウちゃんが白目をむいた。
「なんじゃ、こりゃー!」
 鼻息荒く、マオは答えた。
「雅代。 佐藤雅代ちゃん。 百八十超えてるけど、れっきとした女の子!」
「あら〜」
 ライリーがごく小声で囁いた。


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