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あおのロンド 42


 渡り廊下をまっすぐ行って、左側の二番目が、朱里〔あかり〕の部屋だった。
 中に入るとすぐ、朱里は晴佳の肩を借りてベッドに横たわり、安心したように目をつぶった。
「水、ここんところに用意しとくからね」
 サイドテーブルに小さめのペットボトルを置いて、晴佳は身を起こし、出ていこうとした。
 すると、朱里が呼び止めた。
「ねえ」
「ん?」
「彼、どう思う?」
 晴佳の顔から拭い消したように表情がなくなった。
「葉山麓郎?」
「そう」
 朱里は落ち着かない様子で体を動かした。
 晴佳はドアを見つめたまま、問い返した。
「どこまではっきり言っていい?」
「本音でどうぞ」
「じゃ、言うわよ。 彼は、自己中で冷たい男」
 不思議なことに、それを聞くと朱里はほっとしたようにリラックスした。
「やっぱりそうなんだ」
「第一印象ではね」
「じゃ、構わないよね、少し付き合っても」
 答える前に、晴佳はためらった。 彼女としては珍しいことだった。
「そこまで思いつめなくても」
「私ね」
 姉を遮るように、朱里は強く続けた。
「デートしたことないんだ。 高校のときは何度か申込まれたけど、断った。 先のことばかり考えてた。
 でも、だんだん先がなくなってきたらね、なんか寂しくなってきたの。 尋ねてくるお友達も少なくなったし。 学校出てから四年も経つから当然なんだけどね」
 くるっと向きを変えて、晴佳は思わず大声になった。
「見つけてくるわよ、私がもっとましなのを!」
「ましな人なんて要らない」
 朱里はむしろ楽しげに言った。
「口先だけでいいの。 かわいいね、とか言ってくれて、話をあわせてくれる、それだけで」
「止めてよ」
「止めない」
 日頃静かな朱里には珍しく、鋭い眼が姉の視線をぐっと捕らえた。
「無料のホスト。 そう思えば腹も立たないんじゃない? 彼は私を利用しようとしてる。 でも先に私が利用して、そのまま逃げちゃうの」
 それって危険すぎる、と言いかけて、晴佳は声を飲み込んだ。


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