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心の連鎖 25


 手紙隠しは成功したが、帰校報告をしなかったことでアマンダとフィリスは叱られ、その晩の食事を抜きにされた。
 それでも、夜中に空腹になりすぎて目を覚ますという事態にはならずにすんだ。 いつも親から菓子を差し入れてもらって本棚の隅の缶に溜め込んでいるキティが、クッキーだのボンボンだのを紙ナプキンにぎっしり包んで、二人が謹慎している部屋にそれぞれ配って歩いたからだ。
「私たち食べ盛りなのよ」
 まずアマンダの部屋に座りこんで一緒にドーナツをつまみながら、キティはいきまいた。
「ちゃんと決まった時間に食べないと、い、胃酸が出すぎて胃が痛むんだから」
「いい酸?」
 ちゃんとわかっているくせに、アマンダが意地悪く言い返した。
「言いにくいのよ、この単語。 だいたい科学の名前って舌噛みそうなのばっかり。 ランゲルハンス島とか、ピテカントロプス・エレクトスとか」
「クレプトマニアックとかパキダーマタスとか」
 キティはきょとんとした。
「何それ?」
「盗み癖があるってのと、面の皮が厚いっていうの」
「そんなの授業で習った?」
 アマンダは腹を抱えて爆笑した。
「習うわけないじゃない! 新聞で読んだのよ」
「はあ」
 キティは首をひねった。

 次にキティが訪れた部屋では、同室のマイラに大歓迎されたが、目当てのフィリスは二人に背を向け、窓からの景色を無言で見つめていた。
 その後ろ姿をうかがいながら、キティが声を落としてマイラに訊いた。
「ずっとあんな?」
 マイラは口を尖らせてうなずいた。
「そう。 ほとんど瞬きしないの。 いやだー」
「フィル」
 キティは一人で呼んでみたが、反応がないのでマイラと声を合わせた。
「フィル!」
 ふっと目を覚ましたようになって、フィリスは振り向いた。
「ああ」
「ね、晩御飯抜きだからおなか空いたでしょう。 クッキー持ってきたよ。 ピーナツクリームつきのラスクもあるから」
「ありがとう」
 三人はベッドに車座になって座り、陽気に食べ始めた。

 翌朝早く、霧のたちこめる校内に一台の馬車が入ってきた。 女学生たちはほぼ全員が夢の国にいたが、何人か耳ざとい子が車輪の音を聞きつけ、カーテンをかき分けて外を覗いた。
 裏口から紺色のコートを着た小柄な姿が出てきて、無言で馬車に乗るのが見えた。 ジャニスは終始うつむいていて、一度も校舎に目を向けなかった。
 その後から、たぶん父親だろうと思われる髭を生やした男性がタラップを上がり、ドアが閉まった。 御者のかけ声と共に箱馬車は南の道路に出て、あっけなく木立の陰に姿を消した。
 白いナイトドレス姿のアマンダとリーは、寮の窓辺にもたれ、複雑な思いで目を見交わした。
「これっきり?」
「そうね」
 どちらともなく溜め息が洩れた。
「かわいそうに……」


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