心の連鎖 34
アマンダはさっきから閉じ込められた狼のように部屋を行ったり来たり繰り返していた。
ベッドに並んで座っているリーとキティは、珍しく一言もしゃべらずに、じっと手を握りあって何かに耐えているような表情をしていた。
やがてアマンダの足が止まり、かっと開いた口から怒りの言葉が矢継ぎ早に飛び出した。
「バカなんだから! 駆け落ちするならするって、どうして私に言ってくれないの!」
そこでアマンダは豹のように体勢を低くして、友達ふたりに飛びついた。
「いい? 相手が誰か、絶対にしゃべっちゃだめよ! 彼が事務所をクビになったら、フィルも暮らしていけなくなっちゃうんだからね!」
リーたちは必死でうなずいた。 だがすぐにキティがある事実に気付いて肩を落とした。
「私たちはもちろん言わないけど、告げ口屋は?」
げんなりした顔で、三人は目を見合わせた。
「エイプか……」
「あのサルは絶対言うわよ。 先生方に点数稼ぎするつもりでね」
「しかもあいつ、絵がうまいのよね」
リーが膝に頬杖をついて嘆いた。
「似顔絵描くのが特に上手なんだ」
「描かせるもんか」
アマンダの目が光った。
「幸いエイブは彼の名前を知らない。 教えてないよね?」
二人は複雑に指を組み合わせて誓った。
「言ってない言ってない」
「よし。 口封じに行くわよ。 一緒に来る?」
「行く!」
ふたりは大喜びで声をそろえた。
三人が目的を達して、意気ようようとエイプリルの部屋を出てきたとき、早足でやってきたローゲン先生がアマンダの前に立ちふさがった。
「レイシー。 コートニーさんご夫妻がぜひあなたに会いたいって」
アマンダの表情が仮面のようになった。 それでも彼女はおとなしく答えた。
「はい、行きます」
そして、上着の襟を直すふりをしながら一言だけリーに言い残した。
「エイプを見張って」
「わかった」
女学生たち一人と二人は何食わぬ顔で、廊下を反対向きに別れていった。
応接室にはロジャーとトリシーだけでなく、教頭のランフィスも固い椅子にしゃっちょこばって座って、アマンダが来るのを待っていた。
ドアを入ってすぐ、軽く膝を曲げて礼をしたアマンダに、ロジャーが緊張した声で呼びかけた。
「ああ、こんにちは。 さっそくだが、君に妹の話を訊きたくてね」
「はい」
アマンダは、冷静でいくらか他人行儀な調子で答えた。 鎧を着てるわ、と、トリシーはすぐ感じ取った。
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